Yordan Alvarez ヨーダン・アルバレス

 このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

2024年のAll MLB 2ndチームの選手を取り上げています。選出メンバーについては、MLB.comのサイトを参照してください。

今回は、2ndチームの指名打者ヨーダン・アルバレス選手。

All MLB チームは2019年から開始されました。ポジションごとにその年のレギュラーシーズンで最も活躍したと考える選手をファンや専門家が投票し、その結果に応じて、1stチーム、2ndチームとして選出します。選ばれれば各ポジションにおけるMLBの代表的な選手となるわけで非常に名誉ですね。

2025年シーズンはAthleticsのニック・カーツ選手が鮮烈デビューを果たし驚異的な打棒を振るっていますが、アルバレス選手のデビュー時の衝撃も甲乙つけがたいものでした。

6月デビュー後の87試合で27本塁打、打率.313、78打点、OPS 1.067と猛打を炸裂させ、その年の新人王も満票でかっさらっていきました。守備・走塁の貢献度は低いですが、現在、間違いなくMLB有数のスラッガーで、完成度の高い打撃を披露しています。

キューバから亡命した際はDodgersと契約したのですが、Dodgersでプレーすることなく即Astrosにトレードされました。もしトレードされていなかったら、ひょっとすると大谷選手のDodgers入りもなかったかもしれません。

ちなみに、Dodgersの編成総責任者であるアンドリュー・フリードマン氏はこのことを相当後悔しているようですね。そりゃそうか…
https://dodgerblue.com/dodgers-news-andrew-friedman-wishes-we-would-have-said-yes-other-players-before-trading-yordan-Alvarez-astros/2019/10/27/

筆者は、Red Soxなどでスラッガーとして名を馳せたマニー・ラミレスさんが大好きなのですが、左右の違いこそあれ、アルバレス選手はそのラミレスさんを彷彿とさせますね。

両ひざの手術をするなど怪我が少し多いのですが、長く現役を続けてほしい選手の一人です。

目次

概要

2024年も打率・OPSともにリーグ4位と、今年も打撃面で抜群の成績を残しています。

選手の貢献度を表すbWARは5.4とオールスター級ですが、打撃特化の選手であるため、この貢献度を打撃だけでほぼ稼いでいるところにも凄みを感じます。

四球が高くなるのは強打者の傾向と言えるのですが、一方、20%を優に下回る三振率の低さは他の強打者とは違う打撃の成熟を感じさせる部分です。

デビュー時から、その打席での落ち着き、冷静さ、思考能力の高さがこぞって評価されていましたからね。

そのインテリジェンスの源は謙虚でチーム志向の姿勢にあるようにも感じています。

2019年のデビュー以降の通算OPSは.961。この数値は尋常ではないですね… 2024年に.950を超えていたのはMLB全体で5名(アルバレス選手を含む)、2025年に至っては(記事執筆時点で)たったの2名です。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.3083586.392.95917010.9%15.0%6

※2024年度成績

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

ヨーダン・アルバレス選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • 左打者にもかかわらず、対左投手の方が成績が良い(キャリア通算で打率.316。対右投手は.286)。
  • 初球スウィングを仕掛けてくる率は、意外と平均より高い(2024年35.9%。MLB平均は32.1%)。
  • 毎年フライボール比率上位の常連で2024年もMLB全体で9位。そのフライボールを広角に打ち込むのがこの選手の持ち味。
  • キャリアを通じてみると、苦手な球種やコースが非常に少ない。

選手によるとはいえ、左打者の大きな課題は左投手を打てるかどうかです。MLB全体の平均値を見ても、左投手に対する左打者というのが一番成績が低くなります(下記の表はMLB2024年度の平均値)。

スクロールできます
状況打率出塁率長打率OPS
対右投手(右打者).241.303.389.691
対左投手(右打者).245.321.412.734
対右投手(左打者).249.318.410.728
対左投手(左打者).237.302.366.668

デュラン選手やメリル選手の記事で紹介したように、能力が高い左打者でも経験を積まないと克服できないケースも多いのですが、アルバレス選手はデビューした時から左投手を得意にしています。

そして、いろいろな角度から成績を見てみたのですが、苦手な球種やコースが少ないのもこの選手の強みですね。

ただ、かなり詳細まで踏み込むと、右投手のナックルカーブ、左投手の低めのチェンジアップ(ややスプリッターに近いものも含まれる)はあまり打てていないことが分かります。

2024年は右投手がアルバレス選手の内角低めに投げてくるスライダーは打てなかったようですが、キャリア全体で見るとその傾向はないので、シーズン単年の特殊数値と見た方がよいでしょう。

後は、左投手が左の強打者を抑えるセオリーとなるものとして、外角低めに逃げていく横滑りのスライダー、スウィーパーが挙げられますが、アルバレス選手はこの手のボールはかなり打ちます。

むしろ、それらのボールやカットボールは内角に投げた方が体格の問題からか、打ち損じてくれる可能性が高いです。

総じて野球界のセオリーとなる対策が通用しないところにもアルバレス選手が好成績を残せる要素がありますね。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

パワーとアベレージを両立できるような素晴らしい数値が並んでいますね。これほど各数値を高水準で並べられるのは他にはソト選手か大谷選手といったところだけではないかと思います。

スウィートスポット率も35.4%とソト選手とほぼ同等の数値で悪くなく、前述のようにフライボールを広角に打つ技術も持っています。

そのような技術があるうえで、強い打球を打つわけだから、長打を量産できるのも納得です。

本当に惜しむらくは怪我の多さだけ…

2024個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード76.5m/h771.5m/h
ファスト・スウィング率63.0%1122.5%
スウィング軌道距離7.6ft527.3ft
スクエア・アップ率23.2%5125.0%
ブラスト・スウィング率13.7%710.3%
バレル率14.5%11-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者やアウトの数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.368.356.6671.022
1-0.359.390.9741.365
2-0.294.294.647.941
3-0.500.9712.0002.971
0-1.411.421.7321.153
1-1.328.350.621.971
2-1.375.375.6561.031
3-1.417.741.6671.407
0-2.125.143.188.330
1-2.247.253.365.618
2-2.224.235.478.713
3-2.347.562.4901.051

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.035+.012+.107+.117
1-0+.021+.047+.391+.440
2-0-.050-.053+.015-.039
3-0+.074+.027+1.110+1.137
0-1+.086+.087+.219+.306
1-1+.007+.023+.096+.120
2-1+.044+.041+.084+.125
3-1+.078+.042+.043+.084
0-2-.023-.014-.033-.048
1-2+.083+.082+.117+.199
2-2+.054+.058+.209+.268
3-2+.156+.109+.162+.271
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball198.314.541.41314.813.6
Slider93.271.424.32628.320.4
Sinker97.353.694.4668.512.4
Cutter51.255.553.3711911.8
Curveball55.300.620.40230.425.5
Changeup52.277.596.41423.39.6
Sweeper36.242.364.29929.325
Split-Finger34.452.871.57124.65.9
Slurve11.0001.000.90000
データ参照先

「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。

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