このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。
2024年のAll MLB 2ndチームの選手を取り上げています。選出メンバーについては、MLB.comのサイトを参照してください。
今回は、2ndチームの外野手であるジャクソン・メリル選手。
2024年のオープン戦で鮮やかな打撃を披露し、結果、これまで一度も守ったことのないセンターにコンバートされながらも、メジャー昇格を勝ち取ります。
その後、シーズン中は走攻守において新人離れしたハイレベルなパフォーマンスを見せ続け、あっという間にPadresの主力選手となりました。
球団史上最高のルーキーとして、2025年シーズン開始直後に9年1億3500万ドルの大型契約を結んでいます。
2024年のパフォーマンスを9年継続できるなら、これは非常にリーズナブルな契約と言えるでしょう。BravesのアクーニャJr.選手に続けるか、注目の選手です。
概要
四球率は低いものの、ルーキーイヤーでいきなりOPS .826を叩き出したのは驚異的です。
名打者と言われるような選手でもメジャーに慣れるのに半年程度の期間が必要であることが多いのですが、メリル選手は、最初の数カ月から.280前後の打率を叩き出せていた点は特筆すべきでしょう。
また、コンバートしたばかりにもかかわらずセンターの守備は非常に上質で、スプリントスピードやベースランニングも優秀。
所属しているPadresのシルト監督やライバルチームであるDodgersのロバーツ監督などが、彼の才能・姿勢に対し絶賛を惜しみません。
打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | OPS | +OPS | BB% | K% | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
.292 | 24 | 90 | .326 | .826 | 127 | 4.9% | 17.0% | 16 |
※2024年度成績
カウント別
MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下
- 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
- 0ストライク .336/.390/.577
- 1ストライク .326/.391/.538
- 2ストライク .168/.244/.264
ジャクソン・メリル選手の傾向をまとめると下記の通りです。
- 右投手(打率 .311)と左投手(打率 .240)との成績格差が大きく、特に左のリリーフ投手の攻略に苦戦。
- 広角にフライボールやラインドライブを打つ技術が高い。
- 一方で、やや引っ張り方向にはフライボールやラインドライブの飛ぶ率は低め。
- 三振や空振りは少なめであるものの、チェイス・レートはかなり低く、ボール球への対応は今後の課題。
メリル選手の非凡たる点は、デビュー直後ですでにスイートスポットの指標がMLB全体でもトップクラスであることです(規定打席到達者の中ではMLB全体9位)。
この数値を出せるのであればヒットになる確率の高いフライボールやラインドライブを打ち込んでいき、高い打率を維持できたことも理解できます。
ルーキーとしては非常に高水準の数字が並んでいるのですが、一方、苦戦している部分も見えてきています。
まず、対左投手の成績がかなり低い点が挙げられます。特に6回以降の左投手(端的に言えば左のリリーフ投手)に対しては打率 .188、OPS .467と全く打てていません。
左の強打者に左のリリーフ投手を当てるのはセオリーなので、今後の成績向上のためには対策が不可欠です。
また、好成績を残している右投手に関しても、内角高めのフォーシームに対応できていないので、今後のキャリアでは対応が求められる点だと考えます(2025年8月までの成績を見ると、右投手のフォーシームは苦戦しているようです)。
打席でのアプローチとして、選球眼を身につけることで苦手球種に手を出さないようにしていくのか、それとも、打撃技術を磨くことに重きを置くのか… 対策の方向性は本人の嗜好や適性に左右されるので、一ファンとしては考え抜いたうえで克服してほしいと願っています。
スウィング
MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。
順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。
スウィングの個性が現れた例
大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。
スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。
一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。
ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。
平均バットスピード | ファストスウィング率 | スウィング軌道距離 | スクエアアップ率 | |
---|---|---|---|---|
スタントン | 81.3m/h | 98.7% | 8.6ft | 20.8% |
アライズ | 63.2m/h | 0.3% | 6.0ft | 43.9% |
メリル選手について目を見張る箇所は、ブラスト・スウィング率とバレル率ですね。
適切な角度で打球を飛ばせる、パワーのあるスウィングをしても芯に当てることができる、このあたりのセンスが卓越していることがわかります。
選球眼など磨き上げる箇所はまだまだあるものの、スイートスポットの指標の高さやスウィングの軌道などを見ていると、フリーマン選手に近いものを感じます。
2024 | 個人 | MLB順位 | MLB平均 |
---|---|---|---|
平均バットスピード | 72.2m/h | 95 | 71.5m/h |
ファスト・スウィング率 | 21.6% | 102 | 22.5% |
スウィング軌道距離 | 7.5ft | 68 | 7.3ft |
スクエア・アップ率 | 24.9% | 107 | 25.0% |
ブラスト・スウィング率 | 12.3% | 64 | 10.3% |
バレル率 | 11.3% | 39 | - |
詳細データ
上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者やアウトの数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。
カウント別詳細
個人
カウント別 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|---|
初球 | .439 | .429 | .854 | 1.282 |
1-0 | .409 | .409 | .682 | 1.091 |
2-0 | .333 | .333 | 1.000 | 1.333 |
3-0 | -- | 1.000 | -- | -- |
0-1 | .393 | .386 | .679 | 1.065 |
1-1 | .316 | .310 | .579 | .889 |
2-1 | .306 | .306 | .444 | .750 |
3-1 | .250 | .667 | .500 | 1.167 |
0-2 | .213 | .208 | .362 | .570 |
1-2 | .177 | .177 | .266 | .443 |
2-2 | .207 | .215 | .283 | .498 |
3-2 | .205 | .397 | .295 | .692 |
MLB平均との差
平均との差 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|---|
初球 | +.106 | +.085 | +.294 | +.377 |
1-0 | +.071 | +.066 | +.099 | +.166 |
2-0 | -.011 | -.014 | +.368 | +.353 |
3-0 | -.426 | +.056 | -.890 | -1.834 |
0-1 | +.068 | +.052 | +.166 | +.218 |
1-1 | -.005 | -.017 | +.054 | +.038 |
2-1 | -.025 | -.028 | -.128 | -.156 |
3-1 | -.089 | -.032 | -.124 | -.156 |
0-2 | +.065 | +.051 | +.141 | +.192 |
1-2 | +.013 | +.006 | +.018 | +.024 |
2-2 | +.037 | +.038 | +.014 | +.053 |
3-2 | +.014 | -.056 | -.033 | -.088 |
コース別詳細
対右投手

対左投手

球種別詳細
球種 | 打席数 | 打率 | 長打率 | wOBA | 空振り% | K% |
---|---|---|---|---|---|---|
4-Seam Fastball | 176 | .280 | .530 | .372 | 20.6 | 17 |
Sinker | 99 | .322 | .467 | .374 | 14.4 | 10.1 |
Slider | 84 | .259 | .481 | .349 | 24.3 | 21.4 |
Changeup | 56 | .333 | .556 | .377 | 27 | 19.6 |
Cutter | 46 | .349 | .581 | .397 | 14.9 | 10.9 |
Curveball | 58 | .321 | .411 | .322 | 17.1 | 17.2 |
Sweeper | 30 | .214 | .571 | .334 | 28.4 | 26.7 |
Split-Finger | 34 | .219 | .375 | .278 | 25 | 26.5 |
Slurve | 6 | .000 | .000 | .233 | 14.3 | 0 |
Screwball | 1 | 1.000 | 2.000 | 1.250 | 0 | 0 |
- データ参照先
-
「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。