このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。
2024年のAll MLB 2ndチームの選手を取り上げています。選出メンバーについては、MLB.comのサイトを参照してください。
今回は、2ndチームの外野手であるジャレン・デュラン選手。
2023年スプリングトレーニングでのダスティン・ペドロイアさんのアドバイスをきっかけに打撃開眼して成績を上昇させ、2024年はbWARが8.7(MLB全体で5位)と大活躍の年となりました。
MLBというと、ホームランや剛速球などを繰り出すパワーに目が行きがちですが、フィールディングやベースランニングなどでのスピードも魅力的です。
デュラン選手やDiamondbacksのコービン・キャロル選手、Cubsのピート・アームストロング選手などはその魅力を体現しており、ファンとしてはいつもその走塁や外野守備にも注目しています。
概要
2023年、2024年とOPS .830前後を叩き出し、特に2024年は二塁打、三塁打の本数でMLBトップ。
この2年で、一気にRed Soxでのスター選手の地位を獲得しましたね。
OPS .834という打撃面に加えて、走塁や外野守備においても上位5%前後に入っており、まさに走攻守三拍子そろった選手です。WARの数値が高くなるのも当然ですね。
これらあらゆる面でハイレベルな指標を残していますが、このパフォーマンスを支えているのは彼のスプリントスピード(MLB全体で566人中20位)と言えます。
ですが、筆者としては、その能力はもちろんなのですが、Competitive Runsが334回である点も評価の対象と考えています。
Competitive Runsとは簡単に言ってしまえば、「選手が“全力で走った”と認められる走塁プレー」のことで、この数値がダントツに高いです(2位は298)。
常に全力でハードにプレーする姿勢、そこにデュラン選手の真骨頂があり、それはRed Soxのハート&ソウルと言われた前述のダスティン・ペドロイアさんから継承されているものかもしれません。
打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | OPS | +OPS | BB% | K% | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
.285 | 21 | 75 | .342 | .834 | 131 | 7.3% | 21.8% | 34 |
※2024年度成績
カウント別
MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下
- 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
- 0ストライク .336/.390/.577
- 1ストライク .326/.391/.538
- 2ストライク .168/.244/.264
ジャレン・デュラン選手の傾向をまとめると下記の通りです。
- メリル選手ほどではないが、左投手を苦手としている(対右投手(打率 .298)と対左投手(打率 .240))。
- 投手の左右に関わらず、外角高めに投げられるとほぼ打てない。
- 球種別に見るとスウィーパーに苦戦気味だが、緩急への対応能力は年々高めている。
- 広角に打球を飛ばすタイプだが、グリーンモンスターの影響か、二塁打はセンターからレフト方向に集中。
ゾーン別の各種指標を見ると、とにかく外角高めのストライクゾーンを打てないというのが非常に目立ちます。
ですので、コマンド能力が高い投手は、あまりデュラン選手を苦にしないのではないかと思います。
あとは、左投手のフォーシームも相当苦手にしており、これを克服しない限りは対左投手の成績は上がらないです。球速が上がれば打てなくなるという結果でもなかったので、これもスウィング起因と考えた方がよいでしょう。
ただ、上記以外のストライクゾーン、特にベルト付近から低めはよく打っていました。ある程度、スウィングの距離が取れて強くスウィングできるコースは苦労しないということだと思います。
スウィング
MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。
順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。
スウィングの個性が現れた例
大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。
スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。
一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。
ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。
平均バットスピード | ファストスウィング率 | スウィング軌道距離 | スクエアアップ率 | |
---|---|---|---|---|
スタントン | 81.3m/h | 98.7% | 8.6ft | 20.8% |
アライズ | 63.2m/h | 0.3% | 6.0ft | 43.9% |
デュラン選手は、コンタクト能力の高い中距離打者のような打撃成績ですが、スウィング指標から判断すると、打席では、空振りを厭わず強くスウィングすることを最優先事項としています。
「ランニング、ディフェンスだけでなくオフェンスもハードに」が信条のように見えますね。
「カウント別」でも書きましたが、スウィングの距離を確保できるコースが強いのは、速度の速い打球を打ち込めるからヒットになりやすいのが理由です。
実はデュラン選手、打球速度の最高速だけで見ると、2024年は上位10%、2025年は上位1%の記録を出しています。
よって、打球角度の指標がよくする、もしくは、ライト方向への打球角度を高くすることに成功すれば、さらに長打率を上げることができるはず。
2024 | 個人 | MLB順位 | MLB平均 |
---|---|---|---|
平均バットスピード | 73.6m/h | 49 | 71.5m/h |
ファスト・スウィング率 | 36.2% | 48 | 22.5% |
スウィング軌道距離 | 7.6ft | 59 | 7.3ft |
スクエア・アップ率 | 23.2% | 146 | 25.0% |
ブラスト・スウィング率 | 13.7% | 34 | 10.3% |
バレル率 | 9.3% | 54 | - |
詳細データ
上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者やアウトの数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。
カウント別詳細
個人
カウント別 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|---|
初球 | .368 | .377 | .763 | 1.140 |
1-0 | .451 | .451 | .922 | 1.373 |
2-0 | .500 | .500 | .875 | 1.375 |
3-0 | -- | 1.000 | -- | -- |
0-1 | .350 | .371 | .650 | 1.021 |
1-1 | .418 | .418 | .701 | 1.119 |
2-1 | .426 | .426 | .617 | 1.043 |
3-1 | .400 | .639 | .650 | 1.289 |
0-2 | .254 | .271 | .358 | .630 |
1-2 | .113 | .112 | .132 | .244 |
2-2 | .188 | .195 | .348 | .543 |
3-2 | .158 | .455 | .228 | .683 |
MLB平均との差
平均との差 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|---|
初球 | +.035 | +.033 | +.203 | +.235 |
1-0 | +.113 | +.108 | +.339 | +.448 |
2-0 | +.156 | +.153 | +.243 | +.395 |
3-0 | -.426 | +.056 | -.890 | -1.834 |
0-1 | +.025 | +.037 | +.137 | +.174 |
1-1 | +.097 | +.091 | +.176 | +.268 |
2-1 | +.095 | +.092 | +.045 | +.137 |
3-1 | +.061 | -.060 | +.026 | -.034 |
0-2 | +.106 | +.114 | +.137 | +.252 |
1-2 | -.051 | -.059 | -.116 | -.175 |
2-2 | +.018 | +.018 | +.079 | +.098 |
3-2 | -.033 | +.002 | -.100 | -.097 |
コース別詳細
対右投手

対左投手

球種別詳細
球種 | 打席数 | 打率 | 長打率 | wOBA | 空振り% | K% |
---|---|---|---|---|---|---|
4-Seam Fastball | 225 | .284 | .546 | .394 | 23.8 | 24 |
Sinker | 103 | .398 | .548 | .449 | 12.1 | 10.7 |
Slider | 111 | .221 | .413 | .319 | 33.3 | 32.4 |
Cutter | 71 | .269 | .403 | .317 | 23.3 | 18.3 |
Changeup | 72 | .328 | .552 | .410 | 25.6 | 18.1 |
Curveball | 73 | .290 | .522 | .375 | 28.8 | 19.2 |
Sweeper | 33 | .188 | .313 | .276 | 35.8 | 33.3 |
Split-Finger | 33 | .125 | .313 | .224 | 22.8 | 18.2 |
Slurve | 9 | .333 | .444 | .339 | 23.1 | 11.1 |
Knuckleball | 1 | 1.000 | 4.000 | 2.000 | 0 | 0 |
Screwball | 1 | .000 | .000 | .000 | -- | 100 |
- データ参照先
-
「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。