José Ramírez ホゼ・ラミレス

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

2024年のAll MLB 1stチームの選手を取り上げています。選出メンバーについては、MLB.comのサイトを参照してください。

All MLB チームは2019年から開始されました。ポジションごとにその年のレギュラーシーズンで最も活躍したと考える選手をファンや専門家が投票し、その結果に応じて、1stチーム、2ndチームとして選出します。選ばれれば各ポジションにおけるMLBの代表的な選手となるわけで非常に名誉ですね。

1stチームの三塁手は、ホゼ・ラミレス選手。

Guardiansの顔というべき選手でありながら、MLBにおける「最も過小評価されている選手」の代名詞的存在です(参考:MLB.com記事 Players pick their most underrated peers on the diamond)。

  • クリーブランドというスモールマーケットで長年プレイしている。
  • MVP投票で10位以内が7回、3位以内が3回もあるのに、MVPは取ったことがない。
  • 2024年シーズンは40(本塁打)-40(盗塁)だけでなく、史上2人目の40(本塁打)-40(盗塁)-40(二塁打)に王手をかけていたのに、最終戦がキャンセルになってしまう。
  • 2024年シーズンは大谷選手が50(本塁打)-50(盗塁)という偉業の影に隠れてしまった…

といったようなエピソードもあって「過小評価」がついて回っているのですが、MLB全体を見渡しても走攻守がここまでハイレベルに備わっている選手はいません(ボビーウィットJr.選手くらいか…)。

「周りとの調和を大事にする」「自分を喧伝するようなタイプではない」というような報道も多いので、そのあたりも「過小評価」に影響を与えているのかもしれません。

40-40-40がかかった最終戦がキャンセルになった時に「また来年やるよ」と言ったのはカッコよかったです。そんな台詞、なかなか言えません。
参考:‘I’ll do it next year’: J-Ram’s 40-40-40 bid ends with Game 162 rainout

目次

概要

2024年も走攻守でハイレベルなパフォーマンスを発揮し、選手の総合力を表す指標であるbWARは6.8(MLB全体9位)という高い数値でした。スタットキャストによれば、OAAやスプリントスピードもMLB平均を大きく超えています。

また、13年間のキャリア全体でbWAR 52.3(現役でMLB13位)と、長く一線級の選手として活躍していることも分かります。

首位打者などのタイトルと取ったことはないため(それがまた「過小評価」につながってしまうのかもしれませんが)、走攻守の各指標はどれも高水準の素晴らしい選手です。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.27939118.335.8721457.9%12.0%41

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

ホゼ・ラミレス選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • 2ストライクでの打撃成績が抜群に高い。
  • 典型的なプルヒッター&フライボールヒッター。
  • 2024年は右打席の方がかなり成績がよかったが、キャリア全体ではほぼ同程度。
    • コースに関して言えば、右打席はインコースが苦手、左打席は顕著な傾向はない。
  • 空振り率・三振率は例年、MLBでトップクラスに低いが、チェイスレートがやや悪化傾向。
  • スプリットはやや苦手傾向あり。

「まとめ」と言いつつ、かなり分量が多くなってしまったので、早速、対策に移ります。

左打席(右投手)の場合は、スライダー、チェンジアップ、スプリット、内角高めのフォーシームが効果的です。

ただ、ラミレス選手が少し特殊なのは、セオリーとされる低めの変化球に対しては結構打撃成績がよいという点です。チェイスレートが悪化傾向なので、多少のボール球も追いかけてきてくれますが、ストライクゾーンの低めに入った場合はうまくはじき返してきます。むしろ、スプリット以外の変化球は高めに投げ込んだ方が、結果、打たれていないです。

右打席(左投手)の場合は、内角に速球系やスライダーを投げ込めるかどうかがポイントです。カッターに関しては外角高めに行ってもOKです。

総合的に見ると、引っ張り込むのが難しい球を選択していくのがよいと言えそうです。あとは変化球も中途半端な高さに行くなら、いっそすっぽ抜けてしまった方が反応できず打てない、ということも窺えます。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

スウィング指標で見ると、ラミレス選手はスクエア・アップ率は高いものの、他の指標に関してはMLB内で傑出しているものはありません。

では、なぜ優秀な打撃成績をおさめられるかというと、ラミレス選手には特殊なスキルコンビネーションがあります。

  • 打球角度をつけるスキルがある(平均打球角度19.6はMLB全体8位)。
  • 打球を引っ張ることもできるので、引っ張り方向に本塁打を打ち込むことができる(引っ張り方向の打球51.3%はMLB全体4位)
  • 打球のゴロ率はかなり低い(34.2%はMLB全体17位)にもかかわらず内野安打は多い。
    *500打席以上の129名対象

この独特のスキルコンビネーションによって、打率と長打力の両方を維持できているわけです。

打撃成績は2024年は右打席、2023年は左打席の方が良好と一定はしないのですが、右打席の方がスウィングが速いという傾向は例年同じです。

左右打席比較(2024)

項目左打席右打席
平均バットスピード70.6m/h74.3m/h
ファスト・スウィング率11.5%40.5%
スウィング軌道距離7.2ft7.5ft
スクエア・アップ率28.4%28.7%
2024個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード71.5m/h12371.5m/h
ファスト・スウィング率18.9%11522.5%
スウィング軌道距離7.3ft1277.3ft
スクエア・アップ率28.5%4225.0%
ブラスト・スウィング率12.4%6010.3%
バレル率8.6%66-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.250.250.333.583
1-0.291.291.7461.036
2-0.321.321.429.750
3-0.667.963.6671.630
0-1.214.211.411.621
1-1.293.293.603.897
2-1.298.298.532.830
3-1.182.571.273.844
0-2.230.226.295.521
1-2.271.269.561.829
2-2.250.255.533.788
3-2.394.523.8031.326

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球-.083-.094-.227-.322
1-0-.047-.052+.163+.111
2-0-.023-.026-.203-.230
3-0+.241+.019-.223-.204
0-1-.111-.123-.102-.226
1-1-.028-.034+.078+.046
2-1-.033-.036-.040-.076
3-1-.157-.128-.351-.479
0-2+.082+.069+.074+.143
1-2+.107+.098+.313+.410
2-2+.080+.078+.264+.343
3-2+.203+.070+.475+.546
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball186.310.625.41210.99.1
Changeup131.267.500.34516.39.9
Slider96.226.495.33218.718.8
Sinker82.333.573.4049.98.5
Curveball45.390.707.48817.513.3
Cutter60.246.561.35315.513.3
Sweeper38.243.351.27021.915.8
Split-Finger29.148.185.21623.124.1
Slurve1.000.000.00000
Knuckleball1.000.000.00000
データ参照先

「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。

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