Manny Machado マニー・マチャド

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

2024年のAll MLB 2ndチームの選手を取り上げています。選出メンバーについては、MLB.comのサイトを参照してください。

今回は、2ndチームの三塁手であるマニー・マチャド選手。かつては「悪童」とも呼ばれていましたが、今やすっかりPadresの確固たるチームリーダーですね。

All MLB チームは2019年から開始されました。ポジションごとにその年のレギュラーシーズンで最も活躍したと考える選手をファンや専門家が投票し、その結果に応じて、1stチーム、2ndチームとして選出します。選ばれれば各ポジションにおけるMLBの代表的な選手となるわけで非常に名誉ですね。

「悪童」と呼ばれるようになったのは、彼のダーティプレイ、手抜き、乱闘、対戦相手や審判への物議を醸すふるまいによるものです。

その中でも、ダスティン・ペドロイア選手に怪我を負わせたスライディングについては、これがきっかけでペドロイア選手が引退に追い込まれたという報道も出ていました(ペドロイア選手自身は否定)。

このような行動や報道が度重なり、かつ、マチャド選手の平然とした対応も相まって、「悪童」、「問題児」というイメージが強烈なものになってしまったのですが、勝つために真剣に、クレバーに野球に取り組んでいた結果という側面もあると思います。

2024年のDodgersとの地区シリーズで送球の邪魔になるようにわざと内側のコースを走ったのはその一例でしょう。また、真剣にやっていればチーム内外問わずヒートアップすることもありますよ。

ルールの範囲内であれば、勝つために反則すれすれのプレイをすることもあるでしょう。「卑怯」と言われても、アウト1つで勝負の行方が変わる可能性があることが分かっている選手であれば、勝利の可能性が高いプレイを選択するでしょう。

目次

概要

タイトルには縁がないものの、MVP投票では何度か5位以内にも入ったことがある実力者です。

どこのチームに行ってもクリーンアップを打てる打力、MLBでも指折りの強肩を兼ね備えているのがマチャド選手の魅力です。2024年は少し指標が悪かったものの、三塁の守備もMLBで長年トップクラスです。

20代半ばにはショートを守っていた時期もあった… 天才だにゃ。

2024年、打撃の方はシーズン最初の2カ月くらい「今年、マチャド選手は大丈夫かいな」と思ってしまうくらいに調子が上がってきませんでしたが、6月あたりから打棒が振るいはじめ、結局、最終的には.OPS.800近くまで戻しました。

強打者にしてはやや四球率は低めなので、少しOPSは低めに出がちなように思います。

ただ、それは選球眼が悪いというよりは、あまり空振りしない(よって、強打者にしては三振率も低い)ことが理由なのではないかと考えています。このあたりは「スウィング」の項でも触れます。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.27529105.325.7971207.0%19.3%11

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

マニー・マチャド選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • ハーパー選手やアルトゥーベ選手ほどではないが、初球から積極的にスウィングをしてくる。
  • キャリア通算では0ストライクの打撃成績は良好なので、積極的なアプローチは効果的なのだが、2024年に限っては0ストライクの打撃成績がMLB平均よりもだいぶ低かった。
  • コースに関しては外角高めがかなり苦手(左投手のフォーシームは除く)。
  • 左右問わず、シンカーに対する打撃成績が抜群に高く、フォーシームも比較的得意にしている。
  • 打球は広角に飛ばしているが、2024年はやや引っ張り方向の飛球比率が下がった(トータルの飛球割合も少し低下)。

各種スタッツを見ていくとちょっと不思議な傾向がある打者ですね。

直近の2024年の成績に注目すると、右打者が苦手にしがちの右投手のスイーパーはかなり打ち込んでいたり、フォーシームよりもシンカーの方が得意だったりとマチャド選手の特異性を感じます。

これに比べると、左右ともにスライダー、カーブ、カッターに対する打撃成績はそれほど芳しくないので、積極的に振ってくる早いカウントでこれらの球種を投げていけば、有利なカウントで勝負を進めることができそうです。

当然、緩急を活かすにはフォーシームなど速球系のボールも織り交ぜる必要があります。

2024年のマチャド選手は、右投手の外角のフォーシーム、左投手の内角のフォーシームが打てていないので、コースを大きく間違えないようにすれば、投手は左右にかかわらず緩急をつけることもできるでしょう。

ただし、2024年に打てなかったスライダーを2025年(執筆時点まで)は結構打っています。マチャド選手が優れているのは、このあたりの適応力とも感性とも言える部分であると感じています。やり返さないと、執拗に弱点を突いてきますからね、MLBは…

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

マニー・マチャド選手のスウィング指標を見ていると天性のセンスを感じさせますね。

スウィング軌道距離を長く取ってスウィングスピードを上げているにもかかわらず、芯に当てることも苦にしていない。

だから、これほどのスウィングスピードを誇りながらも空振りは少なく、結果、三振率もこの手のパワーヒッタータイプにしてみるとかなり低い数字になっています。

補足しておかなければなりませんが、マイアミ大時代のエピソードやトレーニング方法などを聞く限り、決して天性の何かだけでベースボールに臨んでいるタイプでは全くありません。

2024個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード75.2m/h2071.5m/h
ファスト・スウィング率52.6%2122.5%
スウィング軌道距離7.8ft237.3ft
スクエア・アップ率25.1%10425.0%
ブラスト・スウィング率16.4%1210.3%
バレル率11.0%43-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者やアウトの数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.303.303.525.828
1-0.206.229.382.611
2-0.444.444.444.889
3-0.250.786.2501.036
0-1.339.339.6611.000
1-1.364.357.545.903
2-1.481.464.8891.353
3-1.267.645.6671.312
0-2.283.273.415.688
1-2.172.172.280.452
2-2.200.200.356.556
3-2.269.465.481.946

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球-.030-.041-.035-.077
1-0-.132-.114-.201-.314
2-0+.100+.097-.188-.091
3-0-.176-.158-.640-.798
0-1+.014+.005+.148+.153
1-1+.043+.030+.020+.052
2-1+.150+.130+.317+.447
3-1-.072-.054+.043-.011
0-2+.135+.116+.194+.310
1-2+.008+.001+.032+.033
2-2+.030+.023+.087+.111
3-2+.078+.012+.153+.166
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball170.273.468.35725.122.9
Sinker148.365.526.414108.1
Slider99.207.370.27933.324.2
Cutter51.213.319.28422.511.8
Changeup43.268.585.38228.420.9
Sweeper50.298.723.41225.316
Curveball46.196.348.23234.434.8
Split-Finger23.182.227.20239.539.1
Slurve5.4001.200.65033.320
Screwball11.0001.000.90000
データ参照先

「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。

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