Jacob Misiorowski ジェイコブ・ミジオロウスキー

これまで打者目線で分析をしてきた本ブログですが、執筆について幅を広げたいと思い、投手分析を行ってみることにしました。

第1弾は山本由伸投手… とも思ったのですが、このブログを読んでくださった方から「ミジオロウスキー投手が好き」というお声をいただいたので、今回はこの2025年シーズンに旋風を巻き起こした驚異のルーキーについて書いていきます。

目次

ミジオロウスキー選手の概要と成績(2025)

歴史に名を刻んだデビューと、そのポテンシャル

Jacob Misiorowski(ジェイコブ・ミジオロウスキー)選手は、2025年にミルウォーキー・ブルワーズからメジャーデビューを果たした6フィート7インチ(約201cm)の長身右腕です。

ミジオロウスキー選手のデビューは衝撃的でした。初登板でノーヒットを記録し、2試合目のツインズ戦では6回パーフェクトを達成。キャリア開始から11イニング連続ノーヒットという記録は1961年以来のことです。わずか5先発でオールスターに選出されるという異例の速さで、その名をMLB全体に轟かせました。

後半戦は脛の打撲によるIL入りもあり制球が乱れて失速しましたが、ポストシーズンではリリーフとして12イニングで16奪三振・防御率1.50と圧倒的な投球を見せ、ブルワーズのNLDS突破に大きく貢献しています。

シーズン全体のERA(防御率)は4.36とやや高めに見えますが、xERAは3.41、FIPは3.62と、いずれも防御率を大きく下回っています(2026年はさらなる活躍が期待できそうですね)。

先発数勝利敗北ERAxERAFIPイニングWHIPK%BB%K-BB%HR/9GB%
14534.363.413.6266.01.2432.0%11.0%21.0%1.0934.9%

制球面にはまだ課題があり、BB%(四球率)は11.4%とやや高めです。ただし、すでにK-BB%(三振率と四球率の差=投手の支配力を示す指標)は20.5%と優秀で、制球の精度が上がれば一気に飛躍を遂げる可能性も窺えます。

打球傾向を見ると、GB%(ゴロ率)は34.2%とフライボール投手寄りで、HR/9は1.09とやや被弾が多めです。フォーシームを高めに集める投球スタイルですから、甘く入ったときにフライが上がりやすいのは構造上避けにくい部分です。

もう一つ注目したいのがLOB%(残塁率)の69.1%で、これはMLB平均(約72%)を下回っています。つまり、走者を出した後に踏ん張りきれず失点に繋がるケースが多かったということです。四球でランナーを溜めた後にフライボールを打たれて長打 ― この「四球→長打」の形がERAを押し上げた主な要因と考えられます。

球種分析

投球全体の特徴

ミジオロウスキー選手の最大の特徴は、6フィート7インチの長身から21度というやや低めのアームアングル(スリークォーター寄り)で投げ下ろすフォーシームです。
一般的に低いアームアングルではバックスピン量が落ちる傾向がありますが、ミジオロウスキー選手はこの角度から16.7インチという豊富なIVB(誘発的縦変化量)を生み出しています。低めの角度から来る球が、まるでライズするかのように打者のバットの上を通過していく ― これはMLBでも極めて珍しい特性です。

さらに注目すべきはエクステンションです。
ミジオロウスキー選手はMLB全投手中トップの7.6フィートを記録しています。MLBの平均的な投手のエクステンションが約6.4フィートですから、約1.2フィート(約36cm)も打者に近い位置でボールを放していることになります。
ホームベース上で30cm以上後ろに打つポイントがずれたら、打者はまともなバッティングはできません。

パット・マーフィー監督はこう語っています ―「大事なのは球速じゃない。打者がどれだけの時間ボールを見ていられるか、つまり“シャッタースピード”なんだ」。
Statcastが算出する「体感速度(パーシーブドベロシティ)」では、ミジオロウスキー選手のフォーシームは101.3mph、スライダーは96.8mphを記録。どちらもStatcast導入以降、先発投手として史上最速です。

ミジオロウスキー選手自身は「ずっとこうだったから、あまり考えたことがない。自分の投球にとって大きな要素だとは思うけど、意識しているのは“後ろ足でできるだけ強く蹴る”こと。それでいて、体が長いから自然と前に出るんだ」と語っています。
身長6フィート7インチの長い手足が、力強い下半身の駆動と合わさって、自然に生み出されるMLBトップのエクステンション。この天性のメカニクスこそが、ミジオロウスキー選手の最大の武器です。

2025年シーズンでは100mph以上の投球を202球記録し、これはMLB全体で5番目の多さでした。
球速だけでも上位1%、そこにStatcast史上最速の体感速度が加わる。
この組み合わせを持つ投手は他に存在せず、このことがミジオロウスキー選手を異次元たらしめているのです。

球種別成績

球種RV/100投球比率%被wOBA空振り%三振%Hard Hit %
4-Seam Fastball0.555.2%.29832.5%34.4%40.6%
Changeup3.15.9%.07637.8%52.4%11.1%
Curveball-0.314.6%.28730.7%38.2%38.7%
Slider-0.624.3%.38020%15.4%37.5%

フォーシーム ― 全投球の55%を占める生命線

フォーシームの平均球速は99.3mph(約159.8km/h)で、MLBの先発投手としてはトップクラスです。球速だけでなく、スピン量もMLB上位2%に位置しています。

さらに前述のエクステンション7.6フィートが加わることで、球速・スピン量・エクステンションの3要素が揃い、結果、被wOBAは.300以下と非常に優秀な結果を残しています。

チェンジアップ ― 「球質」と「結果」のギャップ

投球割合は6%と少ないながら、決め球として非常に有効に機能しているのがチェンジアップです。Statcastではどの項目も素晴らしい数値を出しています。

ところで、ここで、Stuff+という指標を紹介します。

Stuff+はFanGraphsが算出する指標で、「球速、変化量、リリースポイント」などの物理データのみから、その球がどれだけ空振りを奪えるかを予測します。
MLB平均を100とし、数値が高いほど質の高い球ということになります。

球種Stuff+
Fastball121
Changeup80
Curveball127
Slider118

実は、チェンジアップのStuff+は80と、球の物理的な質だけで見ると平均以下です。
にもかかわらず、Statcastの実戦データでは良い結果が出ている。このギャップはなぜ生まれるのでしょうか。

その理由は、フォーシームとの「ピッチトンネル効果」にあると考えられます。

ミジオロウスキー選手のフォーシームとチェンジアップはリリースポイントが非常に近く、途中まで同じ軌道に見えます。
160km/h近いフォーシームを意識している打者は、同じ腕の振りから来るチェンジアップのタイミングに合わせることが極めて難しい。球の物理的な質そのものよりも、フォーシームとのコンビネーションで打者を欺いているわけです。

スライダー・カーブ ― 高いStuff+を誇るブレーキング系

Stuff+で見ると、スライダー(投球割合24%)とカーブ(15%)は、いずれもStuff+が118と127で、ともに球質が非常によいとされています。

特にカーブはStuff+ 127とミジオロウスキー選手のレパートリーの中で最高値を記録しており、フォーシームとの球速差が大きいことから、打者の目線を上下に揺さぶる武器として機能しています。

スライダーはオールスターゲームで98.1mphを記録して話題になったように、一般的なスライダーよりもかなり速く、フォーシームとの見分けが難しい球種です。コマンドも比較的安定しており、フォーシームの制球が荒れる試合でもスライダーで立て直せるケースが見られました。

フォーシーム(Stuff+ 121)とカーブ(127)がメインの武器、スライダー(118)がカウント球とゾーン管理、チェンジアップ(80)は球質より組み合わせで活きる「トンネル球」。この4球種の役割分担がミジオロウスキー選手の投球スタイルの骨格です。

打者から見た攻略ポイント

ここからは、打者目線で「ミジオロウスキー選手にどう立ち向かうか」を考えてみます。データから導いた攻略の方針を3つ挙げます。

フォーシームの対応

ここまで説明してきたように、ミジオロウスキー選手のフォーシームを打ち崩すのはかなり難易度が高く、実際、バットに当てること自体が容易ではありません。特にゾーンの高めに来るフォーシームは、打者の想像以上に伸びてきます。

SwStr%(空振り率)は13.9%と先発投手として一級品の数字で、Contact%(コンタクト率)も74.3%と低いです。

打者はフォーシームを打ち崩す気概がもちろん必要ですが、一方で、冷静に、ミジオロウスキー選手のZone%(ストライクゾーン内への投球率)は48.4%という事実を頭に入れておくべきでしょう(要は半分以上がボール球です)。

これまでのブログ記事で説明してきたように、いかに有利なカウントに持ち込めるかが打撃成績を左右します。

事実、制球力不足で大崩れする試合も何度かありました(BB%が11.4%と高い)。
ボールを見極めて塁を埋め、ボール先行のカウントで甘いコースに置きに来た球をハードヒットするのは基本戦略と言えます。

チェンジアップの見極め

前述の通り、チェンジアップはStuff+が80と球質自体は平凡で、フォーシームとのコンビネーションで活きている球種です。裏を返せば、投球パターンを読んでチェンジアップが来ると予測できていれば、打てるボールだということです。

投球割合が6%と少ないため、使ってくるのは2ストライクからの落とし球など限定的な場面が中心です。速球系投手のセオリーとして左打者への武器になりやすい球種でもあり、カウント状況と打者の左右を意識すれば、チェンジアップの出どころは比較的絞りやすいでしょう。

スタミナに関する不安

66イニングというシーズン投球回数は先発投手としては少なく、まだフルシーズンを回った経験がありません。

2025年シーズンの前半(5先発)では防御率2.81でしたが、後半の8先発では防御率5.50まで悪化しました。

耐久性への不安があるので、試合の中盤以降、あるいは、シーズン後半では、制球力、および、球威に悪影響が出る可能性は高いです。
「フォーシームの対応」にも通じますが、打線全体で粘って球数を嵩ませ、3巡目以降に勝負をかけるのが現実的な攻略法です。

2026年シーズンはこの課題がどこまで改善されるかが大きな見どころと言えるでしょう。

テレビ観戦の際は、「フォーシームに対する各打者の狙い方」と「カウント別の球種選択」に注目してみてください。ミジオロウスキー選手の投球がより立体的に見えてくるはずです。

データ参照先

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